[PR]今日のニュースは
「Infoseek モバイル」

路程記

ほかの人たちはよろこばしい若い日だったのに
毎晩 わが夢はソヘ(黄海)を密航するジャンクさながら
塩につかり潮にふくれて浮かびあがった。  李陸史


永遠の眠りを眠る始祖鳥の夢かもしれぬ世界に棲めり

姉の赤い唇からしずかに昇りゆく婦人体温計の水銀

かたちなき憧れゆえに漂着の重油に浮かぶ虹を見ている

どんな深い海峡があっていまわれに隔てられている名もなき故国

無心に蟻見いる少年背に落ちる縄目のような木の影知らず

少年の冷たい指が弾くとき和音を拒む弦ひとつあり

心ならぬ者に口づけされるなら抵抗の悲鳴鋭く 笛よ

わが国と呼ぶ国もたずかりそめの胸の大地はいま砂嵐

触れるとき耳朶の冷たさかなしくて口に含めば罪犯すごと

やすみなく地上の冬を育ちゆく木々ありわたしの柩の木あり

冬の河渡りつつふいに声を聞く(生まれる前に死にたかったか)

水底に沈みし大樹いまもなお歌わぬ千の鳥を翔たしむ

戻る